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インベンション

弦楽器ではサイズは大体決まっていて、形も典型的な型から大きく外れたものは作れない。規格外のものを作ると市販のケースもなくて右往左往することになるが、求められる形やサイズ、重量とバランスがあって、大きく変えようがないというのが本当のところだ。音楽の在り様が変わるとか楽器の使い方が変わるなどの変化がないと、今後も形は変化しないだろう。最近ではAndrew Carruthersというアメリカの職人がチェロ弾きのMia Pixleyと組んで横板などに溝を刻み、爪で引っ掻くなどして打楽器のギロのような使い方が出来るチェロを作るなど局所的でユニークな試みはあるが、定着させるのは難しいと思う。

一方素材に関しては必要に迫られて今後も様々なものが試される筈だ。カーボンの楽器をはじめて弾いた時の違和感と、アンプを通して弾いているかのような不思議な感覚は今でも覚えている。次なる素材はきっとそういうことを感じさせないものが選ばれるのではないか。弓ではBlack Ibisというカーボン製の弓が昨年新たにスイスで作られているが、ビヨームがかつて図に示したように弓が上手く機能する為には美しいテーパーが必要で、あまり凸凹しているのは望ましくない。


ビヨームの金属製の弓
ビヨームの金属製の弓

ビヨームがかつて考案してパガニーニも弾いたという中空の金属製の弓を以前に弾いたことがあるが、普通に弾きやすい弓であった。このとき学んだことは、弓は素材が何であれテーパーがきちんと整っていれば弓として機能するのである。スイスのカーボンの弓はテーパーに関して改善の余地がありそうだがサウンドオープニングと呼ばれる穴が棹に設けられているなど、コンセプトは独創的で面白い。音にどのような効果があるのかよくわからないが、現在の日本にいる我々のように頭の凝り固まった職人からはこういった自由な発想はまず出てこない。ビヨームはあの時代によくあれだけ色々なものに挑戦したものだと思うし、そのスピリットの欠片ぐらい持っていたいものだ。



画像出典:J.B.VUILLAUME:ROGER MILLANT

L'Archet volumesⅡ P75:Bernard Millant, Jean Francois Raffin


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